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壷.花入.花生

河井寛次郎 花扁壺

こんにちは!

長かった夏の暑さも少し和らぎ、ようやく秋の気配を感じられる頃になってきましたね。

お出かけついでに当店にお立ち寄りいただくお客様も増えたように思います。

さて、本日はこれからの季節にもよく似合うどっしりと落ち着いた雰囲気の作品、河井寛次郎 花扁壺をご紹介いたします。

河井寛次郎 花扁壺

実用を重んじた作陶を行い、柳宗悦らと共に民藝運動を展開した時代の作品です。

この時期の河井寛次郎は、中国や李朝の古陶磁の手法を元にした制作活動初期からの作風を脱し、一陶工として生活と結びついた作品を生み出しました。

暗めの白の地肌に、抽象化された独自の花紋様が描かれています。この花は面いっぱい、左右に大きく広がるような形で描かれており、寛次郎の大胆かつのびのびとした筆致を見ることができます。

寛次郎独自の花紋様が踊るように広がります

また作りはざっくりとした厚手で重さがあり、民藝作品らしい親しみやすさを残しながらもどっしりとした風格を感じさせます。

風格のある厚手の作りです

横に長く角張った扁壷の造形に、寛次郎らしい辰砂の赤や呉須の青が使われた、作者の代表的とも言える要素を併せ持つ逸品です。

こちらの作品は店頭にて展示・販売中です。

当店へお越しの際はぜひご覧くださいませ。


河井寛次郎 略歴

1890年 島根県安来市の建築業、河井大三郎、ユキの次男として生まれる

1910年 東京高等工業学校(東京工大)窯業科入学

1912年 来日中のバーナード・リーチの新作展を見て感動、後日リーチを訪問

1914年 東京高等工業学校卒業。京都市立陶磁器試験所に入所

1917年 試験所を辞し、五代清水六兵衛の顧問となる

1920年 京都に居住、築窯。鐘渓窯と名づける

1921年 東京、大阪高島屋にて「河井寛次郎第1回創作陶磁集」開催、高い評価を受ける

1924年 濱田庄司を介し柳宗悦との交流が始まる

1926年 柳宗悦・濱田庄司らと「日本民芸美術館」設立を発願

1927年 柳宗悦・富本憲吉・濱田庄司・バーナード・リーチ・黒田辰秋らと「上賀茂民藝協団」創立

1929年 ロンドンのボオ・ザアル・ギャラリーにて個展開催

1930年 大阪美術倶楽部にて、「河井寛次郎作陶10年記念回顧展」開催

1931年 ニューヨークにて個展開催

1932年 ロンドンにて個展開催

1934年 バーナード・リーチ来日 鐘渓窯にて共に制作

1936年 「河井寛次郎陶硯百選展」開催 

東京駒場「日本民芸館」開館

1937年 パリ万国博覧会にてグランプリ受賞

1940年 高島屋にて「河井寛次郎作陶30周年記念展」開催

1947年 自作の詩集「火の願い」を棟方志功板画で制作、刊行

自作陶板「いのちの窓」完成

1950年 東京・大阪高島屋にて「河井寛次郎還暦祝賀展」開催

日本民芸館にて「記念特別展」開催

1953年 河井寛次郎著「火の願い」朝日新聞社より出版

「作陶40周年記念展」開催

1957年 大阪、東京、名古屋にて朝日新聞社主催、「陶業40年展」開催

「ミラノ・トリエンナーレ展」グランプリ受賞

1961年 大原美術館が富本憲吉、バーナード・リーチ、濱田庄司、河井寛次郎の作品常設用に陶器館開設

1963年 名古屋オリエンタル中村、岡山天満屋にて個展開催

1966年 死去


大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー 雅翔堂塩谷

営業時間 10:00~20:00(阪急うめだ本店に準じます)

Tel: 06-6313-7618

Mail:umeda@shiotani16.jp

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壷.花入.花生

吉田美統 釉裏金彩蔦文花瓶

暑さもようやくひと段落する頃ですが、台風が近づいたりとまだまだ天気予報が気になる時期ですね。

さて、本日は吉田美統 釉裏金彩蔦文花瓶をご紹介します。

吉田美統 釉裏金彩蔦文花瓶

釉裏金彩とは金箔や金泥などにより器地に文様を表し、その上から透明釉を掛けて焼き上げる装飾技法です。吉田美統はこの技術により重要無形文化財(人間国宝)に認定されています。

こちらの作品では、いきいきと生い茂る蔦の葉が幅最大値24.5×高さ23(cm)ほどの花瓶一面に釉裏金彩によって美しく表現されています。

葉の部分では厚めの箔と薄めの箔が使い分けられていることで、平面に描かれた蔦の模様に遠近感が生まれています。

葉の位置によって金箔の質感が違います

この箔の厚みに変化を持たせる加飾法は、従来の釉裏金彩にはなかった吉田オリジナルの技術です。

背景の器面は、上部の薄黄色の色味から底面の若葉色にかけてグラデーションになっており、蔦の金色に馴染みつつも華やかに文様を引き立てています。

丸みを帯びた柔らかい雰囲気の造形に、卓越した技術による蔦文様が美しい、爽やかな逸品です。

こちらの作品は店頭で展示中です。金彩の見事な技法をぜひ間近でご覧くださいませ。


吉田美統 (よしたみのり) 略歴

1932年 石川県小松市の九谷焼製造を家業とする窯元錦山窯に生まれる

1951年 錦山窯を継ぐ

1974年 第21回日本伝統工芸展初入選

1981年 日本工芸会正会員

1984年 第31回日本伝統工芸展奨励賞

1992年 第39回日本伝統工芸展高松宮記念賞 石川県指定無形文化財保持団体九谷焼技術保存会会員となる

1995年 日本陶磁協会賞

2000年 第47回日本伝統工芸展日本工芸会保持者賞

2001年 紫綬褒賞 重要無形文化財「釉裏金彩」保持者に認定される

2006年 財団法人石川県美術文化協会理事を務める


大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー 雅翔堂塩谷

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神農巌 堆磁瓶

こんにちは。8月も折り返しですがまだまだ夏の暑さが残る毎日ですね。

今回ご紹介するのは涼しげな青磁作品、先日「青磁」の技法で新たな重要無形文化財(人間国宝)に認定された、神農巌による堆磁瓶です

神農巌 堆磁瓶

「堆磁」とは神農が生み出した独自の技法です。作品の原料の土を水で薄く溶き、その泥状にしたものを器肌に筆で何度も塗り重ねることで、線や模様を表現します。

こちらの瓶では、堆磁の技法により、口と底面それぞれからゆるやかに伸びる数本の線文様が全体のアクセントになっています。

上下からすっと伸びる線が優美な印象です

長さも太さも違うそれぞれの線の動きは水面の白波を思わせるようで、優しい青の器肌によく映えています。

瓢箪型のような、くびれのあるなだらかな曲線による独特の造形のため、青磁の涼しげな印象とともに柔らかい雰囲気も持っています。

背面はつるりとして滑らかです

こちらの作品は店頭にて展示中です。柔和さの中にも品格を兼ね備えた不思議な魅力のあるこちらの作品、ぜひ店頭にてご覧くださいませ。


神農巌 略歴

1957年 京都府に生まれる
1980年 近畿大学卒業
1981年 京都市立工業試験場窯業本科にて陶芸釉薬の基礎知識を学ぶ
1982年 京都府立陶工職業訓練校にて陶芸の成型技術を学ぶ
1983年 京都市立工業試験場窯業専攻科にて青磁釉薬を研究
2012年紫綬褒章受章 同年、第7回パラミタ陶芸大賞展大賞受賞
2015年 日本陶磁協会賞受賞
2016年 滋賀県文化賞受賞など受賞
2020年より日本工芸会常任理事を務める


大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー 雅翔堂塩谷

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富本憲吉 色繪角瓶

こんにちは!初夏の気温を感じる6月になりました。

本日は、梅雨入り前の重たい空気も明るくしてくれるような華やかな作品、富本憲吉 色繪角瓶をご紹介します。

富本憲吉 色繪角瓶

幅8.5×高さ約20 (cm)とやや小ぶりな角瓶です。

底のサインより、本作は昭和28〜29年頃の作品と思われます。

側面のうち二面は、赤い花の文様が縦に三つ並んでいます。これは梅の花で、デフォルメされてなお生き生きと花開く様が表現されており、模様を追求しそこに個性を求めた富本憲吉ならではの美意識を感じさせます。

抑揚ある線で描かれています

他の二面と首部分は斜線を組み合わせたシンプルな菱形の文様で埋められており、大胆な中にも独自性のある色使いで、洗練された印象も持っています。

明るい白の器肌と色絵のコントラストが美しく、置いておくだけで空間を明るく彩ってくれるような逸品です。

こちらの作品は店頭にて展示中です。当店へお越しの際はぜひご覧くださいませ。


富本憲吉 略歴

1886年 奈良県生駒郡安堵村に生まれる

1904年 東京美術学校(現・東京藝術大学)図案科に進学、さらにイギリスに留学し工芸意匠の調査・研究に励む

1913年 バーナード・リーチとの交流の中から楽焼に取り組み始める

1915年 故郷奈良に本格的な窯を築き創作に励む

1926年  奈良から世田谷に住まいを移し窯を築く

1944年 東京美術学校教授

1946年 終戦後、京都へ移る

色絵に加えて金銀を同時に焼き付けるという技法(金銀彩)を完成させ、羊歯文様等による独自の作陶様式を確立

1949年 京都市立美術大学教授

1955年 重要無形文化財「色絵磁器」保持者(人間国宝)に認定される (1954年の文化財保護法改正によって新設された重要無形文化財の保持者認定制度発足後、最初に認定された者の一人となる)

1961年 文化勲章受章

1963年 逝去


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杉本貞光 伊賀花入

こんにちは!ゴールデンウィークが終わり、少し暑さを感じる頃になりました。

本日は爽やかな薄緑色が印象的な杉本貞光の花入をご紹介します。

杉本貞光 伊賀花入

重要文化財である、安土桃山時代の伊賀花入(銘「からたち」)を写した形で、伊賀焼らしい一対の耳がつき、破れた口縁部が個性的な力強い作品です。

口縁部

内側に向かって破れています

また、三角形に欠けた口縁部の破片が胴の背面上部に付着している点も再現されています。

末広がりの胴部は六角に面取りされており、流れる薄緑のビードロ釉と、土味がしっかりと残るコゲの対比が印象的です。

ビードロ釉の流れや火色の出方など、見る角度によってそれぞれ違った表情を持っており、自然な味わいを楽しむことができます。

こちらの作品は店頭にて販売中です。お出かけの際はぜひお立ち寄りくださいませ。


杉本貞光 略歴

1935年  東京に生まれる

1968年  信楽山中に穴窯築窯

1974年  大徳寺立花大亀老師よりご指導を受け今日に至る

        沖縄海洋博にレリーフ制作(レリーフ制作を終える)

1979年  大徳寺・如意庵にて個展裏千家にて個展

1998年  香雪美術館にて信楽展出品

1991年  ニューヨーク・ロックフェラーセンター・ギャラリーゼロにて

       アメリカ初個展

1992年  吉兆・湯木美術館(大阪)に作品が収蔵される

1993年  ミュンヘン・ギャラリーフレッドハーンスタジオにてドイツ初個展

1994年  エール大学美術館(アメリカ)に作品が収蔵される

2002年  京都・建仁寺晋山記念として井戸茶盌を納める

        台湾台北佛光美術館にて中日韓国際陶芸展招待出品

韓国利川世界陶芸センターにて国際陶磁ワークショップ招待出品作品が収蔵される

2003年  韓国霊岩陶器文化センターにて韓国陶芸展招待出品作品が収蔵される

        東京庭園美術館にて「現代日本の陶芸・受容と発信」に出品

2005年  滋賀県立陶芸の森陶芸館に作品が収蔵される。渋紙手、高麗黒、青瓷制作完成。

2006年  伊賀焼専用の穴窯築窯

2007年  志野、織部、制作完成

2008年  クラーク日本美術・文化研究センター館(アメリカ)に作品が収蔵される

2011年  蕎麦、伊羅保、制作完成野村美術館(京都)にて個展

2012年  ロサンゼルス・カウンティ美術館日本館(アメリカ)にて

作品が展示されるフランクロイド・ギャラリーにて個展

2013年   野村美術館(京都)にて個展

2014年   阪急うめだ本店にて個展


大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー 雅翔堂塩谷

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初代諏訪蘇山 青瓷鳳凰耳花入

桜の見頃も過ぎあっという間に葉桜の季節ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

本日は初代諏訪蘇山の作品をご紹介します。

「万声」の名を持つ青磁鳳凰耳花生(国宝、和泉市久保惣記念美術館蔵)をモデルとした作品です。この「万声」は南宋時代(13世紀)の中国で盛んに活動を展開した窯の一つ、龍泉窯で作られたものとされています。

緑がかったやや暗めの青瓷釉が、涼しげな静謐さを感じさせます。

鳳凰の頭を模した耳には、冠羽の流れやギュッと閉じたくちばしが表現されており、凛々しい鳳凰の表情が見てとれます。

青瓷特有のひんやりとしたモダンな雰囲気が、これからの季節、和室・洋室どちらに置いても爽やかに楽しんでいただけそうです。

こちらの作品は店頭にて展示中です。ゴールデンウィークのお出かけの際にはぜひ当店へお立ち寄りください。


初代諏訪蘇山 略歴

1851年 石川県金沢市に生まれる
1873年 任田徳次(彩雲楼旭山)に陶画法を学ぶ
1875年 東京で作陶を開始
1879年 石川県勧業試験場の製陶助手となる
1887年~1896年 大病を患い蘇生したことから、号を「蘇山」とする
1900年 京都で錦光山宗兵衛の窯に勤務
1907年 独立、京都五条坂で作陶を開始
1914年 朝鮮李王家嘱託として高麗古窯の調査を行い、再興依頼を受けて窯を完成
1917年 帝室技芸員を拝命 翌年には宮内省より製陶のご用を受け制作を行う

1922年 逝去


大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー 雅翔堂塩谷

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濁手枝垂桜地文六角花瓶

十四代・酒井田柿右衛門(1934~2013)

1934年 佐賀県有田町に生まれる。
1958年 多摩美術大学日本画科卒業。作陶技術を十二代、十三代柿右衛門に師事。
1982年十四代柿右衛門を襲名。
2001年 重要無形文化財「色絵磁器」保持者(人間国宝)に認定される。
2005年 旭日中綬章受章
2006年 有田名誉町民の称号を受ける
2007年 西日本文化賞受賞
2013年6月15日逝去(享年78)

佐賀県有田生まれの十四代酒井田柿右衛門は十二代、十三代が再興した秘宝を若くして受け継ぎました。十二代と十三代が復興させた「濁手」の製陶技術を学びました。
祖父からは絵具の調合と絵付、父からは素地調製、成形と焼成を学びました。
1966年に一水会、西部工業展に入選した事を皮切りに様々な功績を上げ、1971年に「色絵磁器」の重要無形文化財保持者に認定されました。
「濁手」と呼ばれる独特の白素地に、赤絵を基調として草花を描いた作品が特徴的で、伝統を守りつつ時代に合わせて少しずつ変化しているのが十四代の特徴です。

さて、今回ご紹介致します「濁手垂枝桜文六角花瓶」も白い上に柔らかさと温もりを感じさせる柿右衛門独自の濁手に、野生に自生する愛らしい桜の花が伸び伸びと表と裏に描かれています。余白と花との絶妙なバランスが目を引く作品です。

 

またその桜を取り巻くか如く左右の面に描かれた格子柄の文様がモダンで作品の構図を締めています。どの角度から見ても楽しめる作品なのではないでしょうか。

今回のこの作品は店頭にて展示中です。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

 

 

 

大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー
営業時間 10:00〜20:00(阪急うめだ本店に準じます)
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釉裏金彩椿文花瓶

こんにちは。本日ご紹介する作品は
吉田美統「釉裏金彩椿文花瓶」です。

 

吉田美統(1932〜)

略歴
1932年 石川県小松市に生まれ、本名を稔。
1951年 錦山窯3代を継承して上絵付けや金襴手の技法習得に努める
1963年 九谷焼新作展で県知事賞を受賞
1970年 日本万国博覧会に石川県より選抜され百人一首大花瓶を出品
1974年 日本伝統工芸展入選
1976年 朝日陶芸展で受賞
1979年 釉裏金彩鉢外務省買上作品に選定される
1980年 伝統九谷焼工芸展で優秀賞を受賞
1982年 一水会陶芸展で会員優賞を受賞
1984年 中日国際陶芸展で受賞
日本伝統工芸展で奨励賞を受賞
1992年 石川県指定無形文化財に認定
1995年 日本陶磁協会賞を受賞
2001年 紫綬褒章を受章
重要無形文化財「釉裏金彩」の保持者(人間国宝)認定

明治33年(1900)から続く錦山窯の三代目、吉田美統。
吉田美統は高校在学中、戦後に陶芸修行を始めた。錦山窯は初代、二代と「金彩色絵」、いわゆる「庄三風」とよばれる作品を得意とする窯でした。美統が9歳の時に二代が早世したために、技術は窯の職人から習得していました。
クラフト運動へ傾倒した時代を経て、転機が訪れたのは昭和43年。陶芸作家・加藤土師萌の遺作展で出会った「釉裏金彩」という技法に衝撃を受けました。石川県南部発祥の九谷焼の技法のひとつに、この釉裏金彩があります。この技法は、器の表面に金箔を用いて模様を表現し、その上に釉薬をかけて焼き上げるというもので、昭和30年代に技術が編み出され1966(昭和41)年に人間国宝の加藤土師萌氏らが釉裏金彩と名付けたのです。吉田美統はこれをきっかけに釉裏金彩の世界に入り、誰も手がけたことのない、花や蝶などをモチーフにした具象表現を探究します。
手法確立の模索を始め、数々の苦悩を重ね初出品まで約4年をの月日を費やしました。創意を重ねて作陶し、日本伝統工芸展で初入選。その後も錬磨を続けて独自の釉裏金彩を確立し、2001年には釉裏金彩の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。

吉田美統の作品には牡丹や芙蓉といった植物が多く描かれており、今回ご紹介します本作品も椿が可憐に描かれているものとなります。
作品の特徴としては立体感の表現が美しく、写真からもお分かりいただけるくらい金箔の厚みを変えて遠近感を出ております。

こちらは店頭にて展示中です。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

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正倉院復元三彩渦巻文手付花入

本日は入荷しました、
加藤卓男「正倉院復元三彩渦巻文手付花入」のご紹介です。

加藤卓男(1917〜2005)

略歴
1917年 岐阜県多治見市生まれ 父加藤幸兵衛に師事
1935年 岐阜県多治見工業学校卒業
1961年 フィンランド工芸美術学校修了
1963年 第6回日展で特選北斗賞受賞
1980年 宮内庁より正倉院三彩の復元制作を委嘱される
1983年 岐阜県重要無形文化財に認定
1986年 トルコ・トプカプ宮殿美術館にて個展
1988年 紫綬褒章受章
1992年 伊勢神宮の御神宝「陶猿頭形御硯」を制作
1995年 重要無形文化財「三彩」保持者に認定
2005年 逝去

加藤卓男は若き日に広島で被爆し、白血病を患いながらもフィンランドに留学、そんな中で古代ペルシア陶器の独創的な造形、斬新な色合いに魅力を感じて、西アジアで長年に渡り発掘研究に従事し、滅び去った幻の名陶「ラスター彩」の復元を成功しました。ラスター彩、三彩、青釉などペルシャ陶磁の再現や宮内庁正倉院から正倉院三彩の復元制作を委嘱されます。

また陶芸界最高の栄誉とも言えるMOA大賞を受賞し、重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されました。

 

さて、今回ご紹介します「正倉院復元三彩渦巻文手付花入」は加藤卓男の中で最も代表的かつ重要無形文化財保持者にも認定された「三彩」の作品です。遥か遠くシルクロードに想いを馳せ異国を感じさせるような鮮やかな発色が抜群に美しく、花を入れる花瓶というよりこれだけで芸術品として堂々とした出立ちといえます。もちろん花を入れて頂いても茎や葉を連想させるような緑と黄色合いは、花の美しさを際立たせ、華やかにかつ豪華に魅せてくれる作品ではないでしょうか。

また「渦巻文」という名の通り、渦巻き状の模様が入っており至る所に施されています。この渦巻が隠れたアクセントになっており絶妙なバランスで見る人も楽しませてくれる非常に素晴らしい作品です。

和室はもちろん洋室に置いてただいても間違いなく馴染む事間違いなしのこちらの作品は店頭にて展示中です。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

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色絵薄墨草花文花

こんにちは、本日紹介します作品は
十三代・今泉今右衛門「色絵薄墨草花文花瓶」

十三代・今泉今右衛門(1926〜2001)

十三代今泉今右衛門は江戸時代から続く「鍋島焼」の伝統を受け継ぎつつ、現代的な磁器をつくり続けました。その中でも色絵をほどこした「色鍋島」と呼ばれる磁器で数々の名作を生み出していました。
東京芸術大学を卒業しピカソやマチスの影響を受けた作品を作り続けていたそうです。そんな現代的なアートの影響を受け30代後半になるとずっと身近にあった日本の色鍋島の中にも現代的な美しさがあることに気づき、鍋島焼の「現代化」に取り組みました。現代鍋島焼の薄墨・吹墨・緑地の技法を確立し伝統工芸に新たな可能性を生み出しました。文様のデザインにもいままでの伝統の域を超えた型破りな工夫を加え、色鍋島の新たな世界を切り開き、平成元年に重要無形文化財「色絵磁器」保持者(人間国宝)に認定されました。

さて今回紹介します「色絵薄墨草花文花瓶」は酸化ウランを使って表現される「薄墨」の技法を使用した画期的な作品になります。初期伊万里の吹墨技法のコバルトを代えて、グレーで発色する酸化ウランであらわし、渋い滋味な調べの地色を完成させて落ち着きのある色絵を浮きあげる独特な加飾法。
それにより伝統の鍋島焼ならではの色彩描写にさらに表情豊かに陰影をもたらしています。

描かれいる草花が大変美しく描かれており、まるで花瓶に生えたかのように感じられます。お花を入れて飾って頂いても、花瓶単体でも楽しんで頂ける作品ではないでしょうか。

こちらの作品は只今店頭にて展示中ですので、お近くにお越しの際は是非店頭にてご覧下さい。

略歴
1926年 佐賀県有田町に十二代今右衛門の長男として生まれる
1949年 東京美術学校(現芸大美術部)工芸科卒業
1965年 日本工芸会正会員推挙
1975年 十二代死去により十三代今右衛門を襲名
1986年 紫綬褒章受賞
1987年 日本工芸会常任理事推挙
1989年 重要無形文化財「色絵磁器」保持者に認定
1999年 勲四等旭日小綬章受章
2001年 逝去

大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店7階 古美術ギャラリー
営業時間 10:00〜20:00(阪急うめだ本店に準じます)
Tel:06-6313-7618
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